窓をあけておく

窓を開けておくと妻にすぐ閉められます。

9月3日と4日、哲学プラクティス連絡会第7回大会に参加したので感想

哲学プラクティス連絡会は「日本国内における哲学プラクティスの実践者・研究者が集まり、たがいの活動を報告し、情報を交換しあうことによって、哲学プラクティスを豊かで実りの多いものに発展させていくことを目的」(連絡会HP)とした集まりです。年一回の大会は感覚的にはいろんな人たちが集まり、いろんな話ができて交流をして元気をもらえる「お祭り」という感じ。今年は実行委員として準備から関わり、当日は発表もしたので、ちゃんとまとめておきます。報告を残すのは大事。

 

9月3日(金) 19:00 哲学プラクティス連絡会の前日企画:顔を合わせて声を出してみよう:『ドキュメント臨床哲学』朗読会

当該の本に出てくる「ロボット」発言事件の節について、参加者同士が集まって「顔を合わせて声を出してみる」企画。

臨床哲学の授業で、ある看護研究者が「植物状態で、意識の兆候がはっきりわからないような患者さん…に、ナースはどういうふうに何に促されて声をかけているのか」(p.14)という発表をした。そのとき、大学院生の一人が「状況を読み替えていわゆる思考実験をして、仮にその人がロボットだった場合には、ナースは同じような行動を取るのか、それとも変わるのか、ということを発言」(p.14)し、「その場にいたある看護教員が「患者さんの看護の話をしているのに一体どういうセンスをしているんだ」という風に怒っ」た(p.15)。この“事件”を当時のメモをもとに再構成したパート、および複数の関係者が<「ロボット」発言をどう受けとめたか><なぜそしていかに「ロボット」発言なのか>について証言したパートから成る節。(https://peatix.com/event/2867737

・実は『ドキュメント臨床哲学』は未読で、この事件のことも知らなかったので、まずそもそも今回のことで知れて、読めてよかった。当事者含めてそれについて話をし、出版物に遺していってくれていることに感謝。

・みんなで音読するだけで1時間近くかかって、時間がかかる(事前に読んできてディスカッションすればいいじゃんとか思っちゃう)けれど、その場でとにかく一度読むことで、みんなでこの事件と感じたことを共有したという土台ができる感覚もあった。

・集まったみんなで同じことをコツコツ積み上げていくことの大事さみたいな感じかな。

 

9月4日(土) 哲学プラクティス連絡会当日

http://philosophicalpractice.jp/information/

自分が参加したところについて書きますね。事前の申し込みのあった数でいうと参加者総数は90名超。スタッフを入れて100人くらいだった。

9:30 大会実行委員で直前打ち合わせ

・参加のときの音声環境について悩み、もぞもぞして妻を困らせる

・自宅からオンラインイベントに一日集中して参加するのって大変(直前まで妻と細かく相談しておかなかった私が悪い)

・結局、スピーカーは使わず、PCに有線イヤホンを、iPadに無線イヤホンの2台体制で行くことに

 

10:00 オープニング

大会のガイドライン発表。この作成は昨年度からの更新部分で、自分もハラスメント等発生時の相談窓口に名前を連ねた。なにができるかわからないけれど。大会直前ではあったけど運営委員以外の方にも3名、協力していただけたのがとてもよかった。

 

10:30 ワークショップ:地域でこども哲学2021 〜なんで私が”今も”こども哲学?〜 にて発表(司会)

・私が提案した企画。4年前も(ほぼ)同じメンバーで連絡会で発表していて、それから4年経って変わったこととか今の想いを話し合うという趣旨のトークセッション。

・参加者MAX24名くらい(うち発表者とスタッフが8人なので、純参加者は16名くらい。)

・発表者してくれた人たちは長く続けているなかでご自身のなかにある種の変化はあったようだけれど、その方向性が違うのが興味深かった。ファシリテーションのやり方が180度変わった人もいれば、一実践者から普及を担う「先輩」になってきた人、苦しさや葛藤をもつ人、などなど。地域であえて続けていくモチベーションや楽しさを維持し続けるのって大変だなあと改めて。

・聞いていただいた方達からはいくつかチャットで感想や質問を受け付けつつ、基本的には最後まで発表者間でのトークセッション。

・聞いてくれてる人たちにも話しをしてもらう工夫や準備があればよかったけど、どうしたらよかったかな。あのメンバーで話すという点だけでも時間が足りなかったからなー。

 

13:30 プレゼンテーション:探究の共同体における教師と子ども のタイムキーパー

・実行委員としてzoomアカウントの管理やタイムキープの仕事。つつがなく終わってよかった。

・ビースタのP4C批判を念頭にしながら、複数の研究を参照しながら議論をされてとても明快。

・実践上の「聞くhear」と「聴くlisten」の区別を提案されて、P4Cにおいて教師は単に議論に注意を向けて「聴く」だけでなく、ただそこで発されている言葉を受け入れるように「聞く」こともするのではないかという問題提起。後半の議論でも「聞く」と「聴く」の話題で盛り上がる。

・参加者から「連絡会にもこういう発表(研究よりの?)があってよかった」とのコメントがあったけど私もそう思った。よく練られたものを提示してもらえるのは受け取る側としてとても勉強になるのでありがたい。

 

15:00ワークショップ: 哲学プラクティショナーはどうすれば一緒に考えられる?:倫理綱領勉強会の経験を手がかりに にて発表

・ここ2、3ヶ月くらい、毎週の勉強会に入れてもらっていたメンバーと企画して発表。大会のテーマ「安心・安全」にも関係するし、連絡会や学会でのワーキンググループで議論していきたいような=発表者個々人では受け止めきれないような話題も含んでいるのでそれなりに緊張。

・参加者33名くらい。そのうち、話したいと言ってくれた人が20人くらいいたのでブレークアウトルーム2つに分かれて実施。

・”哲学プラクティスにかんする課題を一緒に考える”際の「みんな」について考える場だったのだけど、そもそもの前段の”哲学プラクティスにかんする課題を一緒に考える”ということで発表者が思っていることについてもう少し共有しておいたほうが参加しやすかったかもしれない。それでも参加者の人たちは難しい問いかけについて一緒についてきて考えてくださった。

・こういう問題(どういう問題だろ)って、自分自身をその「みんな」に入りうるものとしてどれくらい思えているかにそもそもズレがあるので、話に温度差みたいなものを感じることもある。でもそれは当然のことなので、それを踏まえていかないと、意識高い人たちだけの排除性たっぷりの集まりみたいになっちゃう。

・ブレークアウトルームの司会をしたけど、そういうわけでめちゃくちゃ難しかった!

・発表中は「倫理綱領」についてはあまり話題にはならななったものの、終わったあと、17時まで「倫理綱領」などをめぐって雑談が白熱していた印象。むしろ倫理綱領について考えたかったのかな。

 

17:00 運営企画&クロージングトーク

・連絡会のこれからを考えるために、現状維持か新しい役割や機能を付けていくかについて意見を出し合う会。

・現状維持グループの書記をしたけど、事務局負担のことを多くの方が気にしてくださっているのがよくわかった。なんというか、基本的にみんな今の持ち場での仕事でいっぱいいっぱいで負担を担おうとはなれないんだろうな。

・私は今年は育休中で時間がありそうだったので、いつも参加して楽しませてもらっているお礼のつもりで運営委員をやったけど、確かに来年は仕事をしながらだとなかなかきついなという感覚がある。どうやっていくのがいいのかな。わかんないな。

 

終了後の(我が家での)事件

ほぼ1日妻に子をみてもらっていたし、同じ部屋の中で私がちょこちょこ喋るから妻も集中して何かができるわけでもないし、妻も気になる話題もあっただろうに一緒に聞いたり参加するような環境にできなくて申し訳なかったです。

せめてもの感謝の気持ちで、たらこパスタを私が作り始めるけれど、その途中で声をかけてもらった倫理綱領勉強会メンバーの軽い打ち上げに参加。耳で聞きながら調理する。麺を茹でて、フライパンにバターを敷いて熱して、麺が茹で上がったところでフライパンに移して茹で汁足して、たらこを混ぜてさっと絡める、という時間との勝負の最中に、打ち上げのほうで話したくなってしまって話し始めてしまい、パスタとたらこの入ったフライパンをだらだらと火にかけ続けてしまう。見かねた妻がキッチンに来て伸びてしまった麺をお皿によそう。

モヤモヤするので打ち上げに参加して話したい気持ちと1日のお礼のせめてもの印として家事をしたい気持ちを両方やろうとして、失敗する。妻からすれば打ち上げに参加したいならすればいい(たらこパスタは自分で作る)し、たらこパスタ作るならそのときだけでも料理に集中しろ、ということでその通り。私にはほんとこういうことがよくある。ごめんなさい。

 

実行委員をしてみて

・いつも他にもお忙しいことがたくさんある中大会を支えてくださった人たちには感謝しているつもりなのだけれど、思っているならちゃんと支える側にと思って、今年はチャレンジしてみた。思いのほか、打ち合わせもたくさんあってきついなーと思わないでもなかったし、きっとこれからより持続可能な運営にしていくためにはマニュアル化・フォーマット化できるところはしていく必要があるんだろうとも感じた。特に実行委員長は仕事しすぎなのでなんとかしないといけない。この仕事量を前提に誰かにふるのはやっぱりかなりきつい。今年はガイドライン作成なども含めて整備や知見の積み上げがだいぶ進んだ印象(そのせいで実行委員長は余計大変になってしまったわけだけれど)で、そろそろ運営の簡素化の条件が整ってきたんじゃないかな。

・個人としては他の方が作ってくださったタイムテーブルを下敷きにした上で、Zoomや要旨集へのリンク付きのタイムテーブル(タイムテーブル上の該当のものをクリックするだけで発表に飛べる)を作ったのでそれがみなさんにとって快適さにつながっていればうれしいな。

・翌日の日本哲学ラクティス学会の大会についての連絡や予稿集やZoomリンクの案内は、必要な情報を盛り込んだシンプルなもので、連絡会の実行委員でプログラム集のあり方とかに散々議論していたのに比べると落差も感じる。もちろん連絡会と学会で想定している参加者も違うのだけど、連絡会のほうもシンプルにできることはシンプルにしたらいいのかも。従来のアカデミアの慣習による学会的あり方が唯一の正解ではないんだけれども。

・今回は元々が関西での開催を目論んでいた経緯もあり(?)、これまでじっくり一緒に何かを企画したりすることはなかった人たちと長い期間の準備を一緒にさせてもらうことになって、それ自体が一つの哲学プラクティスのような感覚もあり、とても貴重な時間だった。こういう細かい作業やSlackでの日々のやりとりが哲学か?と問われると違うかもと思うけど、哲学プラクティスっぽいよとは言える。ご一緒できたことに感謝です。ありがとうございます。

 

うれしいこと

・大会と同時に連絡会の機関紙である『みんなで考えよう』が公開された(全文へのリンク⇨https://drive.google.com/file/d/1y_NPK2_o_83RVy7ZCmCOhjovO5sa2pkH/view?usp=sharing)

のだけど、そこに勤務校の学生さんが、昨年度私とやったプロジェクト学習でのオンライン哲学対話についての文章を投稿してくれている。私も事前に話は聞いて、軽く読んでコメントをさせてもらったけどしっかり自分で仕上げたのはえらい。うれしい。編集委員のみなさま、いつもありがとうございます。『みんなで考えよう』を読む会もやりたいですね。やりたいことはたくさんある。

 

以上。他の人の感想も読みたい!

明日は翌日にあった哲学プラクティス学会についての感想も書きます。

 

p4c-essay.hatenadiary.jp