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オンデマンド授業の何に(教員であるぼくが)疲れているのか

今週のお題「2020年上半期」


オンデマンド授業、4月の第2週から今週まで、約3ヶ月やってみた。まず学生さんたちは(特に最初の1ヶ月、2ヶ月は)大変だったと思う。そのことについても考えなければならないのだけど、今日は教える側だった自分が疲れたことを書きたい。自分のためにこの数ヶ月疲れた自分を成仏させるのだ。


実働時間は減ったとも言えるけど、、、

オンデマンド授業はこちらが事前に録画、作成した動画コンテンツを時間になったところで学生さんに視聴してもらうものなので、たとえば3クラスに授業に行くところを一つのコンテンツを作ればOK。なのでその意味では楽になったはず。あとは、プリントの印刷もないし、課題や感想などを書いてもらうのも、従来は紙の大福帳やワークシートのプリントでやっていたところをオンラインでformsやOneNoteでやってもらうので、回収する手間もなくなった。


その分増えたのは、、

動画コンテンツ作りはもともと授業で使っていたパワポを見やすくしただけで、全く新しくしたわけじゃないけれど、これはこれで結構こだわりだすと時間がかかる。そこに音声を吹き込む作業については、私はもう割り切ってしまって、台本なしのほぼ一発撮りだったので、撮り始めれば40分ぶんくらいの音声を90分以内には撮り終わっていたと思う。


むしろ、大変だったのは、オンライン用に課題を作り直したり、オンラインツールの運用やその管理の方かなと。期末テストも行わず、日々の提出物や小テスト、エッセイで成績をつけることになったこともあって、15回の授業で毎回の感想課題、5回くらいの小テストと期末テスト(MS Formsを使った)、2回のエッセイと期末レポート(One note)、をやってもらった。テストの採点は自動でやってくれるからいいけど、トータルでは日々課題の準備やチェックなどに追われていた感覚がある。

 

毎回の課題ふりかえりの作成

もう一つ、今回は哲学対話やグループワークができない代わりに、毎回授業の感想やこちらからの質問に答えてもらって、それをこちらが匿名にして、全てワードにまとめて、次回授業で共有していた。それに加えて、質問や雑談のネタも受け付けていたのだけれど、授業内容に関係あるなしに関係なく、色々なコメントをくれた人たちがいて、それにも答えていた。それらをまとめて、こちらがラジオっぽくおしゃべりした10分くらいのパワポ動画(後半から音声)を作って共有していたのだけれど、これを楽しんでくれていた人たちが一定数いたようで、大変やりがいになったし、顔は見えないけれど、生身の学生さんたちとやりとりをしているような感覚があって、とてもよかった。少しずつ熱のこもったコメント(ほとんどが授業とは関係ない)ものも届くようになったし、早口言葉のお題をふられたこともあった。

一人ひとりにお返事をするよりははるかに負担は少ないのだけれど、でも、これもそれなりに時間がかかる作業ではあったかなあ。

あとは、そういう自分の熱心さとか親しみやすさアピールみたいなものを冷めた目で見ていたり、ふりかえりの音声は全く聞かずスルーしていた人もかなりいたんだと思う。そのことは、考えないようにしていた。

 

顔のわからない学生さんたちとのやりとり

やはり、疲れたのは、これかもしれない。

授業を受けた2年生は自分が担任しているクラス以外の4学科160人の顔と名前が全く一致しない。

そんな中でコメントを書いてもらい、質問を個別でも受け付け、応答する。書いてくれたものについても、顔が浮かばないとどう返したらいいか普段以上に手を止めてしまうこともある。にもかかわらず、出席確認を兼ねて対面のとき以上にたくさん課題は出すので、毎回の授業へのフィードバックだけは受け続ける。こちらも学生さんたちを課題によって監視し、評価するのだけれど、同時にこちらも課題を読むなかでどれくらい授業を聞いてくれているのか、授業内容が理解させているのか、評価されてもいる。一定数は、講義動画の冒頭とか、まとめ部分だけを読んでそれっぽいことを書いているだけのようにも思えるけれど、それはこちらの授業が下手だからメッセージがしっかりと伝わっていないだけなのかもしれない。受け取り手の姿が見えないから、不安が募る。

 

学生のエッセイのコピペを疑う

「哲学ミニエッセイ」と称して、自分で問いを考え、400字や600字以上の文章を書いてもらう課題を出した。文系科目の少ない高専生にとっては、この字数でも最初は面食らったらしい。採点は、微差ではあるけれど、出せば全員満点、とかではなくて、よく書けているものともう少しというものは差をつけるようにはしていた。

そんななかで、学生さんからしたら自分の文章しか見ないから、バレないと思っているのかわからないけど、こちらはたくさんの文章を一気に読んでいるから、違和感のある文章ってやっぱり目につく。で、コピペかどうか、ネットで時間をかけて検索してみると、ブログ記事がひっかかる、ということがあった。検索しても出てこないこともあった。学生さんたちのふだんの学校での姿とコピペ云々を過度に結びつけるのもよくないと思うけど、でも、顔が見えないからこその疲労はここにもあったと思う。

 

オンデマンド授業は何を評価しているのか(追記)

小テストも、課題も、レポートも出して、評価資料はたくさん集めて、細かく評価をしたけれど、たとえば小テストは、カンニング対策とかは特にしていないただFormsの選択回答なので、どうとにもなる。コピペだってもっと巧妙にやっている人もいるかもしれない。その意味で、今季の授業の評価はなにを評価しているのか、という疑問はやっぱり持ち続けている。

一人でコツコツ頑張った人よりも、友だちと協力したコミュ力おばけさんが点数が高いということは(私の科目に限らず)ざらにあったと思う。

こちらは、評価なんて所詮たいしたもんじゃない、と思っていたりして、割り切っている部分もあるけれど、学生さんからしたらそんなもんじゃないし、今期は真面目な人ほどすごく葛藤があったんじゃないかと思う。

 

 

この本のなかで紹介されていたのだけれど、p4cハワイの先生たちの心得の一つに、

「評価のあり方そのものを考え直す視点を持つ」(後日、ちゃんと引用します。)

というものがあった。あらためて、この機会に、評価についても、考えてみないといけない。

 

 

でも実は授業じゃなくて...

と、ここまで書いてみて思うのは、授業はもちろん疲れたけれど、充実してもいたということ。時間をかけた分、良い反応をしてくれた人たちもたくさんいた。それもまた改めて書きたい。

疲れたなあというのは、もしかすると担任業務やそれに関連する学内でのやりとりだったのかもしれない。クラスの学生さんたちが授業にちゃんと出席しているか(課題を出しているか)がわからないなかで、留年を心配しないといけない*1、どのタイミングで保護者にも連絡をするか、考えないといけない。なにぶん、諸先輩方も含めて、未知の仕事ばかりだったので、そこの気疲れも大きかった。でもこれは生々しすぎてこれ以上は書けない。

*1:各科目の出席規定というのが厳密にあるので、夏休み前に留年が決まる可能性が大いにある