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夏休み開始ーオンデマンド授業の学生さんたちの感想を読んでみて

夏休みが始まった。本校(高専)は例年だと2ヶ月近く休みがあるのだけれど、今年は8月24日までの1ヶ月間。学生さんたちのなかにも不満の声はあるようだけれど、学校としてできる限りの対応をして、土曜授業なども設けずにこれなので、ご理解いただきたいところ。教員としては、成績を出したり、夏休み中に保護者面談があったり、休み明けの授業の準備をしたり(「プロジェクト学習」でオンライン哲学対話をするのです)、あっという間に過ぎてしまいそう。

 

授業についても私の場合後期に新しく収録したり、講義をしたりする科目はかなり減るので、ここまでの学生さんたちの取り組みや反応やふりかえりのコメントを見て、今の段階でもふりかえっておきたいところ。いくつか多かった感想や印象深かったコメントをもとにしてメモ書き程度に書いておこう。

 

ちなみに、ここで書いてもらったコメントは、学校のとった公式の匿名アンケートではなくて、私が授業内で独自にやっているもので、学生のアカウントと紐づいてしまっている。なので、いくら記述内容は評価とは関係ないと伝えていても、学生からしたらひどいことは書きづらいし、褒めておきたいという気持ちになるだろうと思うので、そこは差し引いて見ていかないといけないところでもある。実際以下で紹介するのも

 

パワーポイントのスライドが良かった。穴埋めプリントが良かった。

対面授業のときから時々言われることで、そこかーい!と思いつつも、ありがたくお褒めの言葉として受け取っておく。

これは本校の事情として、対面時も、またオンデマンド移行後も、板書+講義+ノートでなさっている先生方が多いので、それと比較したときに、ラクということなんだろうなと思っている。

ちなみに、プリントの配布には問題もあって、学生さんたちの中には家にプリンタのない人もいるので、授業日よりもだいぶ前にアップロードして、それをコンビニや登校日に印刷してもらう、という必要があったりした。2学期になってからは、こちらで若干数は印刷して研究室に準備しておくことにした。

 

前回の課題のふりかえりや質問対応のための音声(動画)が良かった

これは以前も書いたけれど、好評で良かった。こちらとしても、オンタイムでの交流ではなかったし、学生さんの顔と名前も一致しない状態ではあったけれど、そのなかでは良いコミュニケーションができたかなと思っている。

しかし、音声を聞かなくても成績には関係がないので、きっと聞かずに、穴埋めプリントや小テストに関係するメインの講義動画だけ見ていた人もいるんだろうな。まあそれで良いのだけれど。

 

エッセイを書くのは勉強になった

こういうコメントがあったのもありがたかった。計3回やったのだけれど、よく書けているものを匿名で紹介して、フィードバックして、最後は全てのエッセイに私からも手短にコメントを返してみた。でもおそらく私からのコメントが、というよりも、よく書けているとされた同じ学年の人たちの書いたものを読むなかで、学んでもらったこともあるのではないかなとは思う。いろいろ改善の余地のある実践だけれど、不慣れなone noteも活用してでも、やってみて良かった。(one noteの利点であるはずの共有機能や共同編集などは使えなかったけれど。)

 

授業日にやったオンライン上での意見交換が良かった

少しずつ学生さんも私も授業に慣れてきたあたりで、生命倫理の回があったので、「親が子をデザインすることは良いと思うか」というテーマについて、意見をオンライン上で書いてもらう(授業日当日17時まで)、という課題も取り入れてみたのだった。それは他のクラスメイトもリアルタイムで追えるのだけど、そこから一人一回のノルマを超えた対話ややりとりには発展せず、改善の余地があるかなと思っていたのだけれど、もっとそういう回があっても良かった、とのことでした。もちろん、そういうのはダルいだけだからやめてほしい、という学生さんもいるでしょうが。

 

授業動画の長さは「ちょうど良い」8割、「少し長い」「とても長い」が2割くらい

・ふりかえり音声10分〜15分くらい

・講義動画40分くらいを2本に分割

という感じだった。(本校は対面一コマが90分です。)

どうしても話すぎてしまう人間なのでこの時間に抑えるのも難しかったけど、なんとかなって良かった。これも、先生によっては(あるいは教科として教えるべき内容が多くて仕方なく)、90分近い動画コンテンツがあったりしたようなので、それと比べれば学生さんのことを考えられた内容だったのかなと思う。

2回くらいだけリアルタイムでビデオ会議に加わってもらって講義をしたのだけれど、そこではやはり雑談めいたことも含めてだらだらとしゃべってしまうので、長くなってしまう。収録だ!これが残るぞ!と思うと、なるべく余計なことをしゃべらないように、という気持ちになったのでした。

 

課題の量は「少々多い」が6割、「ちょうどよい」が4割(若干名が「多すぎる」)
課題の難易度は「難しかった(が適切な範囲)」が6割、「適切な難易度だった」が4割

オンデマンド/オンライン授業の弊害として、学生への課題過多が叫ばれていたし、本校でも問題としてずっと教員間でも議論されていたのだけれど、それでもこちらとしてやってもらいたいものもあるし、ということで悩んだところもあったのだけれど、これくらいで収まったのでとりあえずよしかなと思う。小テストは復習になったとか、エッセイは勉強になった、とか、課題のふりかえりのコメントがよかった、とか、そういったコメントももらったので、評価に使う課題の内容が授業内容と紐づいている意味のある課題だと感じてもらえたところもあるといいなと思う。

 

2学期は、学修単位といって、授業回数を半分に減らす代わりに事前事後に課題を出し、それに取り組むことで、1単位分の学習内容の定着を目指すことになるので、その分課題も多かった。原則毎回、A4で2枚くらいの次の授業テーマに関する文章を読んでおいてもらって、予習をしてもらうことにしていた。それが大変という人もいて、そりゃあそうなんだけれども、良い予習になったという人もいた。みんなが満足する授業は難しい。

 

 

学生さんからのありがたいコメントより

 

倫理Aでは倫理Bni引き続き、哲学者たちの思索や現代の諸問題をただ学ぶだけではなく、みなさん自身と問いを立てて考えること=「哲学すること」を重視し、毎回の課題やエッセイなどを指示していました。 8回をふりかえって「哲学する」姿勢や方法は身に付きましたか。問いを立てて考えることの大事さや楽しさは伝わりましたか。また「考えること」について以前とあなた自身が変化したことはありますか。

  • まず、一学期と明らかに変わったことは、どうしても引っかかった授業内容があった場合に、その授業のプリントを自然に見返すようになったことである。 一学期までは、復習しようという気分になってから初めてプリントを見返していたのだが、ココ最近は「そういえば、〇〇がよく分からないな」といった感じで見返すことが増えた。このようなことから、「哲学する」ことにかなり積極的になれたように感じる。 また、問いを立ててそれについて考えるエッセイなどは、初期も楽しさはあったが、正直、時間を取られているという若干の苦痛もあった。しかし、今はそれもなくなっており、ただただ楽しめている。 倫理A、Bの授業を受けていく中で、このように「考えること」に対して面白さを感じることができるようになれた気がする。

 

  • 最初は哲学に対するイメージすら湧かない状態からのスタートでしたが、倫理の授業を通してこうゆう感じか!というイメージを掴むことが出来ました。エッセイを書くのはやっぱり難しかったけど、自分の意見を思うままに書いて、他の人の意見も聞いて難しさと一緒に楽しさもたくさん感じることができました。途中でわからなくなってもいいという先生の言葉で気軽に取り組むことができたように思います。倫理では普段何気なく過ごしていたら考えようなことまで深く考えることができ、問に対する自分の考えを再確認できるというか自分はこんな風に考えるんだなという新鮮な気持ちで毎回取り組めました。人間らしさが出るところでもあるのかなと思います。 考えなくても生きていけることは沢山あるしそれなら別に考えなくてもいいと思っていました。でも授業を全て終えた今は、ちょっとした問いを考えていくなかで新たに得られるものがあるんだと思うようになりました。また、自分以外の人の考えを知ることも自分の考えを深めたり新しい発見をしたりできて大切だと感じました。

 

  • 倫理Bで毎回の課題やエッセイに取り組み、「哲学する」姿勢や方法は身についたと思います。期末レポートに取り組んだ時にそれを実感しました。自分で気になったニュースや論考を選び、その内容に対して自分が考えたことを、なぜそのように考えるのか、読み手に伝わりやすいように自分なりに工夫して書く事ができました。自分がそんな風に書けるようになったのは、課題に取り組んだのはもちろん、他の人のエッセイを読み、学んだ部分がとても大きいと思います。他の人のエッセイでは、例は分かりやすく、身近なものを挙げていて、読み手が共感しやすかったり、問いかけの文を入れて読み手に興味を持たせる工夫がされていたりしました。それらを自分のエッセイにも取り入れることで、自分のエッセイが前よりもとても分かりやすく、読みやすいものになったと思います。 (中略)考えることについて、私はよく分からなくなったら、「人それぞれ」という言葉でいつも解決していました。しかし、倫理Bの授業で「人それぞれ」で考えるのを終えると、思考停止ということになる、と知り、私は問いについて「人それぞれ」で解決するのをやめるようにしました。そうすると、以前より自分がいろいろな角度で問いに対して考えられるようになった気がします。そうして自分が問いに対して出した答えは、「人それぞれ」と出した答えよりもはるかに自分の納得のいくものだったと思います。なので、倫理Bの授業を通して自分の問いへの考え方を改められてよかったです。

ありがとうありがとうありがとう。(大事なことなので三回言う。)

 

授業を受けての感想や担当教員に伝えたいことなど、ご記入ください。

 

  • 期限や提出方法の制約から、どうしても自分の意見がまとまらないこともありました。授業が終わってからも引き続き考えているので、まとめきれなかった意見の続きをいつか話せるといいなと思います(研究室に突撃して図々しく先生に話すも良し、哲学対話で皆に話すも良し)。

 

  •  先生は、学生と上辺だけではないコミュニケーションをとろうとしてくださるし、あまりにも難しすぎる問題を出されたりもしないので、学生に単位をくれる工夫をしてくださっていることが伝わってきます。ありがとうございます。

 

  • 授業が長めの時にいつも謝っている先生に毎回伝えたいなって思ってて忘れていたことがあるんですけど、先生の授業は長めになったときでもそこまで長いわけではないし、なにより授業自体がとても楽しいので気にしなくていいと思います。今まで楽しい授業をありがとうございました。

 

  • 倫理の授業で、命を大切にするとはどういうことなのかや異なる価値観の人同士は共に生きていけるのかなどの普段、考えることのないようなことに対し、深くそのことについて知り、考えました。とても楽しく、倫理の授業は聞きやすかったです。自分の考えを書くのは苦手だったので、少し難しかったです。これからは、普段の生活のなかで、答えがないような問があるかもしれないのでそのときは、そのまま通り過ぎず1度考えてみようと思います。

 

  • 倫理って何だろう、難しそうだなと思っていたのですが、とても分かりやすくて、自分の知らない考え方に触れることができてとても楽しかったです。 ありがとうございました。 また、学校が始まったら先生とMrs.GREENAPPLEの話をたくさんしたいです! 

 

こういうコメントばかり取り上げるのは、あまりにも自画自賛的に見えて不快に思われるかもしれないけれど、自ら自尊心を高めていくライフハックなので、お許しください。たまには褒めてもらわないと生きていけない。

 

みんなが満足する授業は難しいのならば、だれを見て授業をするのか。

今回は、そもそも非匿名でのアンケートということで厳しいコメントが少なめだったし、他の教科と比べれば、オンデマンド授業への対応を丁寧にやったという自覚もあるので、割と肯定的な意見が多かった。と同時に、ここでも、あえて良い感想をとりあげがちになってしまったところはあると思う。ただ、一方で、授業の感想や書くことを見ていても、うまくこちらの伝えたかったことが伝わっていないなと思うコメントはもちろんあるわけで、現状で満足してよいわけではない。

このあたり、理系の人たちの学校で、必修授業で、哲学系の授業をする、というときに、どういう人たちに向けて授業をするのか、という難題は常に残る。

 

でも今日はここまで。