最近も哲学対話の授業、細々してます。
やりながらもあんまりうまくいかないなあと思うことが増えているような気持ちもあったのだけど、先日やったやり方が感触がよかったのでメモ。
前提の確認
・高専での授業です
・クラスは40人超え
・倫理などの社会科系の授業でやります
・確保できる回数は一クラスあたり3,4回(1単位:15回の授業)
・授業は90分
課題だなあと思っていること
- 人数多い
これについては最近は原則、金魚鉢対話*1でやっているところではある。ただし、それでも20人。グループワーク的なものもやったほうがいいのかなと思ってはいる。
- 学生の側からは参加した感覚があまりない人もいる
発言はしなくてもいいよと伝えているのだけれど、それでも「発言できなかった」「次は発言できるようがんばる」みたいな反応が常にある
- できれば対話に参加したくない人も強制的に参加させている
そういう人にも円の中に座ってもらうことに意味はあると思いつつ、本人も乗り気ではないから、ダルそうだったり、辛そうだったりする*2
- 問いを選ぶことにあまり時間をかけられていない
ただの多数決で機械的に決めてしまって、問いを選ぶ、どの問いがよいかを考えるプロセスを大事にできていないなあ
- 対話のなかで学生から質問や疑問が出てきづらい
対話中は質問をするのが大事だよと口頭で伝えても、いざ話すとなると「自分の意見+その理由」みたいな型が多い。質問するのはもっぱら教員である私の役割みたいになってる
で、今回やったのが...
①4人組のグループで座る
②問いの候補を共有する*3
③グループで話す:「どの問いが気になってる?その理由は?」
④問いを決める*4
ちなみに選ばれた問いはこんな感じでした。5クラス。
-
人と人がよい関係を保つために大切なことは?
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科学技術が発達した世の中と、マンモスをみんなで追いかけてた時代どちらが幸せか?
- マスクを外しても良くなってもマスクを付け続ける?
- 差別をすることで得られるメリット、デメリットとは何か?
- 人の幸せより人の不幸の方が嬉しいのはなぜ?
⑤グループで話す:1周目「問いについての今の考えは?」
2周目「今話したことに質問・疑問はある?」
※「質問」は、グループの人個人に向けて聞きたいこと。「疑問」は、話してみたことに関連してよくわかんないこと、全体に投げておきたいこと、ととりあえず説明してみた
⑥グループで代表者を2人決める
⑦代表者で円を作って話す、残りの人たちは外側を囲んで対話を観察
※代表者の人はワークシートはふりかえりに該当する部分だけでOK. 観察の人は対話に参加しない分、対話中に対話の内容をメモする(観察)もがんばってね。
やってみてどうだった?
グループでの哲学対話も案外やってる
ふだんの哲学対話の感想を見ると、「決まった人ばかりが話してる」「次は発言したい」「もう少し少人数で話したい」などの声が結構ある。ただ、私はグループでの話し合いは、学生によってはサボるし、うまく回るグループとそうじゃないグループができたりすることが気になっていて、だったら発言機会自体は偏っても自分が進行する大きな円での対話の時間を多く取りたいなと思っていた。でも今回やってみると案外話している。一周目にこれやって、二周目はこれやって、みたいに指示を出すのもよかったみたい。欲を言えばグループでの対話を記録するワークシートも今後作ってみたい。
全体の対話で学生から質問や疑問が出てくる
哲学対話では問い合うことが大切と言葉で言ってもなかなか実際に学生が話すことは意見が中心。でも、このやり方だと、一度グループの中で話して、質問や疑問を溜めてから対話をするからか、全体の対話でも質問や疑問がちょこちょこと学生の側から出てきた。こっちとしては、ああ哲学対話が始まるぞーって気分になる瞬間。
参加の仕方を学生が選べる
授業の哲学対話は参加を強制してる。もちろん、話したくなければボールが回ってきてもパスしていいよとは伝えているし、一度は円の中で考える体験をしてもらいたいのだけれど、考えるということに焦点を当てるなら、話しながら考える人がいてもいいし、クラスメイトの話を聞き、メモをしながら考える人がいてもいい。最初にグループワークで少しは話してもらう時間をとることで、全体での哲学対話の参加の仕方を選べるようにしたのは良かった気がする。もちろん、グループで代表2名にしたので、話し合って決めているグループも、じゃんけんしてるグループもあったけれど。何回かこのやり方でやるうちに、今日は話してみようかな、という人も出てくるかも。
うーん、あんまりうまく感想を書けなかったけど、やっている本人としては感触がよかったのです。
ほか、哲学対話関連ではこんなことも考えたよ
哲学対話といえば。2年生のときに哲学対話をやったクラスが5年生になっていて、この前対話をしたのだけど、今回使ったコミュニティボールが当時自分たちで作ったものと違うと複数の人から指摘されて、ドン引きした。(褒めてる。)中には、自分が巻いた毛糸は何色だったとかまで覚えている強者もいた。
— おがぢ⛅ (@ogadi_ogadi) June 2, 2022
哲学対話の感想のなかに、「○○について考えると(この対話は)もっと長くなりそうだと思った」というものがあって、おもしろい。学生さんからすると「めんどくさい」くらいの意味かもしれないけれど、「どうやったらこの問いをもっと長い時間考えられるか」を考えるのは、おもしろい。
— おがぢ⛅ (@ogadi_ogadi) June 2, 2022