理事を務めるNPO法人から本が出ました!
アーダコーダ初の書籍『こども哲学ハンドブック 自由に考え、自由に話す場のつくり方(アルパカ刊)』が8月31日に販売を開始しました!のべ300名以上の方にご受講いただいた主催講座をもとに編纂したこれまでのアーダコーダの集大成です。以下のリンクよりお求めください!https://t.co/Z9KRIZnVlV pic.twitter.com/z9dab2GwXe
— こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ (@arda_coda) September 2, 2019
私もここ2年くらい本格的にかかわってきたアーダコーダの主催講座のテキストをもとに編纂したもので、「こども哲学」という今注目されつつある実践について、はじめて触れていただく方には心からお勧めできる本です。
なんと、畏れ多いことに、本書の奥付では執筆者の末席に私の名前も記載いただいています。ありがとうございます、ありがとうございます。
ただ、実際に本になるまで1年以上、本当にがんばっていただいたのは、私よりも前に名前のあるお二人の執筆者の方々です。それぞれ、教育や哲学とは直結しないお仕事をフルタイムで日々なさっているなかでの執筆、大変だったことと思います。
私は本書の執筆過程でもいくつかの項目については協力をしましたが、どちらかといえば、私の本書への貢献は、本書のもとネタのほうにある、と思っています。
うなぎ屋のタレみたいな本
この本のもとネタは、アーダコーダが2014年から行っている主催講座のテキストです。これは当時講座発足時におおもとを作った先人たちがいて、それを少しずつ少しずつ毎回の講座のたびに議論を重ねながら修正、追加、更新して使ってきたものです*1。
つまり、この本は、創業時から継ぎ足し継ぎ足し使っているうなぎ屋の秘伝のタレ、みたいなものだと言えるでしょう。
その意味では、この本には執筆者として名前があがっている面々だけでなく、たくさんの方の活動や知見が表に出ないかたちで積み重なってできたアーダコーダやそれに関わった人たちのこれまでの活動の集大成といってもよいと思うわけです。
創業時から継ぎ足し継ぎ足し使っているうなぎ屋の秘伝のタレみたいな本です
これが言いたいがために今日のブログを書きました。
たかだか4,5年でうなぎ屋かよ、という感じもするかもしれませんが、アーダコーダがスタートする前にも実践の歴史があったからこそ、アーダコーダがあり、講座があるわけで、特に関東圏でのここ10年のこども哲学の広がりと、そこへのアーダコーダ関係者の貢献をみるときには、あながち大げさでもないかな、とも思ったりもします。
マニュアルがないもののマニュアル本という微妙な位置づけ
しかし、本書はそのやわらかい概観のわりに、案外その位置づけをめぐっては悩ましい問題を含んでもいる、と著者の一人ながら思っています。
それは、はたして、本来マニュアルなんて重要じゃないものについて、マニュアル的なものを紹介した本を出すとはどういうことなんだろうか、という葛藤です。
たとえば、弊団体の初代代表、川辺さんはこんな風に著書で言っています。
結局のところ、子どもたちが安心して、言いたいことを言い、お互いの言い分を聞き合える関係ができているなら、「こども哲学」の方法論なんて、どうでもいいんじゃないかな、というふうに、今は思っています。
(川辺洋平著『自信をもてる子が育つ こども哲学 - “考える力"を自然に引き出す -』, 2018, p. 33.
基本的には、私も同じように考えています。
その意味で、こども哲学は、こどもたちに活発に考えさせたいから、こういう方法を採用しよう!とか、こういう風にすればきっとうまくいく!みたいな特効薬的なものではないだろう、むしろ、こどもとともに考える、哲学することについての心がまえを名指したものなんだ(その意味ではとてもシンプルでマニュアルなんていらないものなんだ)、そう思っています。
そんな風に考えるにもかかわらず、それでもなぜ今回の本は『ハンドブック』なんていかにもマニュアルっぽい本なのか。
もちろん、本の出版経緯やタイトルは私個人の一存とはまったく別のところにあるので、別の話です。それにそもそも本書はただのマニュアル本ではなくて、もっと柔軟な読まれ方にも対応できるようになっている、と思います。
その一方で、やっぱり、マニュアルっぽい部分をもつ本は、こども哲学の心がまえに共感してくれている方たちが、実際に自分でそれを始めていくときには、ゼロから一緒に寄り添うような本があったらきっと背中を押してくれるとも思うのです。
だから、この本は、実はマニュアルなんてないものについてのマニュアル本、という一見矛盾しているようで、でも、とても大切な本なんです。
こども哲学の「やり方」って千差万別であるべきでマニュアル化すべきでないという想いや葛藤は今もあって、そんななかでも、これから初めてチャレンジしてみたいという方の背中を押せるような、実践の際に寄り添えるようなものになればと思っています。
— おがぢ🌕 (@ogadi_ogadi) September 1, 2019
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同じように、アーダコーダがこれまで担ってきた活動や講座、今回の本も、そういったノウハウに特化した方法論や特効薬だ、に見えるかもしれないけれど、私たちとしては決してそんなつもりではなくて、一緒にこども哲学という心がまえを共有し、丁寧に場を作っていくお手伝いができる団体でありたい、と少なくとも私は思い続けています。
もう一人の著者の方のブログはこちら
合わせて買ってね
(私のページだけかもしれないけど、)「よく一緒に購入されている商品」に土屋本(『僕らの世界を作りかえる哲学の授業』)はまさに我々の意を得たり、という感じで、ぜひ2冊合わせて手に取っていただきたいです。https://t.co/qzYNoSjMJD#ぼくてつ
— おがぢ🌕 (@ogadi_ogadi) September 1, 2019
*1:私は、直近二年くらいの講座のテキストについて、みなさんの意見を集約し、具体的な更新や修正の作業を行っていました。