窓をあけておく

窓を開けておくと妻にすぐ閉められます。

本をいただく:『自信をもてる子が育つ こども哲学 - “考える力"を自然に引き出す -』

著者の川辺さんよりご恵投いただき、早速読みました。
自信をもてる子が育つ こども哲学 - “考える力
自信をもてる子が育つ こども哲学 - “考える力"を自然に引き出す -
 

 

「一人の親がこども哲学に出会い、のめり込んでいくこと」が書かれた本

川辺さんとは2年ほど前にこのNPOに誘っていただいてからのご縁で、お会いすることよりもSNSで日々連絡をとりあわせていただいている。

 

ardacoda.com

 

 

川辺さんは単刀直入に要件を伝えながら^^を最後につけてくるという高度なビジネススキルを有している。もちろんこういうスキルなんて川辺さんのごく一部にすぎなくて、私は実はよく知らないのだけれど、めちゃめちゃ仕事ができる人でもある。

 

そんな川辺さんがなんでこども哲学なのか。

お会いしてしばらくたつけれど、よくわかっていなかった。

そんな個人的な疑問にも答えてくれるような、「一人の親がこども哲学に出会い、のめり込んでいくこと」が書かれた本でもあったと思う。(別に川辺さんのライフヒストリーがふんだんに直接に書かれた本というわけではないけれど。)

 

対話の相手も魅力的

対話の相手として登場される方々も、いっしょにこども哲学の実践をさせていただいたことのある方たちばかりで「そうかー、そういう想いがあったのかー」と一人で納得しながら読みました。

 

父親としてお子さんと一緒に熱中する活動。

理論づくめの子育てから解放してくれた活動。

生きるため、生きやすい社会に向けた活動。

障害をもつ子どもの見る世界を覗く活動。

 

こども哲学や哲学対話って、「だれが」その問いや意見を言ったかというパーソナルな部分というのは無視しても、議論できる、というのが魅力だと一方では思っている。「だれが」が関係ないから、こどもも大人も、女も男も、「ふつう」も「障害」も、一緒になって対等に考える可能性がある。

 

それでもこの対話を読むと、やっぱりこれは理論ではなくて実践なんだから、こども哲学に魅力を感じる人がどんな人で、どんな関心で、それに向かっているのか、という観点は、ただの与太話ではなくて、とても重要なことなんだ、とも強う思うのでした。。

 

自分は10年後、20年後も「哲学する人」であれるだろうか

自分は20代がもうすぐ終わる今は、教員として「哲学すること」を教えながら、なんとか自分自身も「哲学する人」であろうとしている。

 

でも、10年後、20年後、教員としての経験を重ね、また子どもをもつようになったとして、そのとき、ただの「哲学させる人」になってしまうのではないか、という恐れを日々感じている。

 

でも、この本に出てくる方たちは、川辺さん含め自分よりも長い人生経験を経ながら、こどもと向き合うなかで、ただこどもに哲学させるだけじゃなくて、ご自身も「哲学する人」であらんとしている。

 

いつか、自分が哲学することを忘れてしまいそうになったときに、手に取りたい、そんな本でした。

 

 

夏休み

 

高専の学生たちはおとといから夏休みに入りました。

私も試験や成績、レポートなどの集計がひと段落したところです。

 

 

お会いする皆々さま、どうぞよろしくお願いします。

「いなかの学校」にこども哲学をしに行く

週末出かけることが多かったのと、学校のほうも少し忙しかったのもあって、久しぶりのブログ。

 

「いなかの学校」にこども哲学をしに行く

先週末は所属NPOへ来た依頼を受けるかたちで、県内のフルーツ農園を会場にした二泊三日の小学生向けのキャンプ、「いなかの学校」に夫婦で参加させてもらってきました。

 

私たちの仕事は、様々な自然体験のプログラムのなかで、「こども哲学」を小学生20人とすること。そして夜にはスタッフの方や参加していた大学生の方々にこども哲学のミニ講座をすること。

 

 

www.facebook.com

 

三日間、ほとんどすべてのスケジュールに参加させてもらい、めちゃめちゃ暑くて、疲れましたが、新鮮なことがいっぱいあり、楽しかった!

 

感じたことがたくさんあるので、ブログにもメモを。

 

自然のなかでふしぎやぎもんを見つけよう

こども哲学、といっても、豊かな自然環境のなかで、ただ座っていつものように「なぜ勉強するのか」「大人とこどもの違いはなにか」を考えるのだけだとつまらない。

そう思って、今回は三日間の目標を

ながーく、考え続けられる、自分だけの「ぎもん」「ふしぎ」を見つけよう

に。 

みんなで丸く座って対話をする、ということよりも、「ふしぎ」を見つける、出会う、気づく、を意識してやってみた。

 

こども哲学の「問い」の特徴を、調べて答えが見つからない、とか簡単に答えが出ない、とかで、説明することもあるけれど、実は良い問いの特徴って、「ずーっと考えても楽しそうなもの」にある気が最近している。

 

一年生と六年生、男子と女子

 キャンプには周辺の小学校から1年生〜6年生の男女が参加している。友だちどうしもいるけれど、もちろん初めましての子たちもいて、一緒にワークをしたり、遊んだりする。会場となった農園にはハンモックやトランポリン、ブランコなどがあって、プログラムの合間合間には自由に遊んでいいので、子どもたちは暑さにも負けず遊ぶ遊ぶ。

楽しいのはいいのだけれど、特にトランポリンは定員もあるし、激しい遊びだし、どうしても高学年男子が中心になって、低学年男子や女子はなかなか交ざれない。

大人は基本放っておくので、泣く子も出てくる。

たった二泊三日なのに、最後にはパワーバランスが出来上がっているし、かなり強めの「いじり」も集団でするようになる。

 

久しぶりに「遊び」の様子を見て、ああ、学年や性別が違うなかで一緒に遊ぶってなんでこんなに難しかったんだっけなあ、と思い出した。

 

 
自然は生きているのか
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二日目の夜は、 屋外で、真っ暗になって星が見えるようになるまで、みんなで哲学を。

自分の思い浮かべているもの(「将棋」とか「椅」とか)を質問でしぼっていくゲームをしていると、ある子が思い浮かべたのは「土」(...だったと思う)。

 

その質問のなかで、「それは生きていますか?」に生きているって答えたのだったかなあ、よく覚えていないけれど、答えの「土」がわかったあたりで、「土とか自然とかは生きてないだろー」みたいなクレームが出てきた。はてと思って、本当は「楽しい遊びの条件って?」という問いをこちらから投げかけようと思っていたのだけれど、予定を変える。

 

自然は生きているのか 

 

生きていない派は当然いるのだけれど、生きている、とも言える、と考える人たちも一定数いる。私のほうで質問を重ねてみる。

 

「でも、絵本とかアニメとかでは木が話したり、するよね?風がゴウゴウ言うのにセリフがついてたり、、、」

でも「あれはうそだよ」と反論される。

もちろん、そうなのかもしれないけれど、じゃあ世の中にある自然が生きていることを描く絵本やアニメは全部うそ、で、いけないもの、ということになるのかなあ。

「絵本はその作者には少なくともそういう風に(自然が生きているように)見えている(のだからウソとは言えない)」

と主張する子もいて、個人的にもすごく考えました。

 

都会と田舎

初日の夜は、大学の授業の一環で来ていた大学生のみなさんやスタッフのみなさんとこども哲学のミニ講座。時間が限られていたので、手早く解説をしてから、みんなで哲学対話を体験してみる。

問いは、複数あった候補から(私が出した!)「都会と田舎の違いとは」に。

すごく盛り上がって、ずんずんと話題が展開して、問いが生まれて〜というような対話ではなかったかもしれないけれど、「いなかの学校」の研修のなかでこの話ができたことはとてもいい時間だった。

「いなかの学校」は県内でも都市部に住む子たちを受け入れつつ、自然に触れてもらい、田舎で過ごすことの魅力を感じてもらいたい、というコンセプトがあると思う。わたしたち夫婦を受け入れてくださった方からも私たちに対して「都会の方たちからすれば〜」みたいな声をなんども聞いた。

都会と田舎という雑だけど強力に自分たちの思考を縛る二分法のなぞ。

今自分の住んでいるところは田舎なのか都会なのかなあ。

 

葛藤する少年

最終日、最後のこども哲学の時間では、夫婦で相談して、思い切って3日間フツフツと感じていた、「みんなで仲良く遊ぶことの難しさ」をダイレクトにぶつけてみた。

 

「好きな遊びとその理由」をあげてもらったあと、そこで出てきたドッジボールやトランポリンについて、なんで楽しいのか、あるいは楽しくないのか、今回の三日間も含めてなかなかみんなで仲良くは遊べないのはなんでなのか、問いかけてみた。

高学年男子からも低学年男子からも女子からも(こういう分け方もこちらの一方的な分け方でしかないけれど)それぞれの立場から意見も反論もあり、ヒートアップ。落としどころは見つからなく、問題をぶつけるだけぶつけて終わってしまった。

 

そのなかでも印象深かったこと。

 

プログラムの終わりに、三日間通して書いてもらっていたワークシート(その都度見つけた「ふしぎ」や「ぎもん」を書く)を完成させて、わたしか妻かに見せて短くやりとりをして、サインをもらう、ということをお願いした。

 

直前の対話を受けて、「みんなで遊ぶためのルールとは?」みたいな問いを書いてくれる子もいれば、それを避けてか前日見た夜空の星をふしぎに思う子、などなど最後にちょっとだったけれど個別で向き合えてよかった。

 

そんななかで一人の高学年の男の子。初日に「農園の周囲を歩き回って「自然のなかにあるよく見るふしぎなもの」を見つけてきてね!」という提案をしたときから目を輝かせてくれていて、ほかの場面でも自分から手を挙げて発言してくれていた。一方で、トランポリン遊びでは他の子たちと一緒に、高学年チームとして、低学年の子などにかなり強めに当たってもいた。

 

最後の遊びのルールについての対話中も、ずっとなにかが言いたそうだったけれど、水を向けても今回は話をしなかった。

 

最後にワークシートを見せてもらいながら(彼の問いは直近の遊びについての対話からのものだった)話せたので、今回は話したいことがなかったのか、聞いてみた。

 

話をしてみると、彼としては、自分たちの三日間の遊びでの振る舞いは、自分たちなりの「ルール」を提示してのものだったから非があるとは思っていない。そう言いたかったけれど、対話中に低学年の子たちからの反論を聞くにつれて、迷いが生じてきたらしい。

言葉少なに、

「よくわかんない気持ちになった」

「(発言しようと思ったけれどそれをためらったのは)はじめて」

と彼は言っていた。

 

 

そういう自分のなかにある葛藤や矛盾やモヤモヤ、彼だけじゃなくて今回のこども哲学で何人かのこどもたちが持って帰ってくれていたら、うれしいな。

 

 

翌日はヘトヘト

 

夫婦で、こっちにきてから買った車で、出かけられたのもうれしかった。

妻にも心からの感謝を。ありがとう。

海外のp4cの論文集がいっぱい出ているという話

 そろそろ研究もまずは論文を読むところから再開しなくちゃいけない

学校での哲学対話を研究するうえでは、「こどものための哲学Philosophy for Children」の研究の蓄積がとても大事。

 

リップマンという名前ばかりがまだまだ日本では前に出ているけれど、当然彼に続くいろんな人たちがいろんなことを考え、論じている。

 

これとか、

Philosophy for Children: Theories and praxis in teacher education

Philosophy for Children: Theories and praxis in teacher education

 

 

これとか

The Routledge International Handbook of Philosophy for Children (Routledge International Handbooks of Education)

The Routledge International Handbook of Philosophy for Children (Routledge International Handbooks of Education)

 

は目を通した記憶がある。特に後者は充実していて、もっとちゃんと勉強しなくちゃいけない。 

 

と思っていたら、同じRoutledgeから続けて似たような名前の本が出ているではないですか。 

 

History, Theory and Practice of Philosophy for Children: International Perspectives (Routledge Research in Education)

History, Theory and Practice of Philosophy for Children: International Perspectives (Routledge Research in Education)

 

 

  

 後者はアン・シャープへのトリビュート的な論文集。

アン・シャープはこどもの哲学とフェミニズムとかのつながりも論じていたらしく、関心がある。まとめてみたい気持ち。

 

 

あとまだ出ていないけれど近刊も。 

The Routledge Handbook of the Philosophy of Childhood and Children (Routledge Handbooks in Philosophy)

The Routledge Handbook of the Philosophy of Childhood and Children (Routledge Handbooks in Philosophy)

 

 

全部高いんですけど、どうしたらいいですか?

どれも読まなきゃいけないわけですが、重要度はどうなってますか?

だれか!おしえて!ください!

 

 

けんきゅうひ!でここに挙げなかったもの含めて何冊か買ってみます。後日なるべくレビューします。