窓をあけておく

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(国内の)国際会議へのお出かけーシチズンシップ教育という言葉の認知度の話とか

(国内の)国際会議で発表をしたよ

高専や技科大、そして協力関係にある、シンガポール、香港、フィンランドの工学教育系の先生方が集まり、工学教育の未来的なことをテーマにする国際会議が、今年は近くで開かれたのです。

東京の某むらせ先生にけしかけていただいて、勢いで申し込んだはよいものの、

This is my first presentation at international conferences.

だったので、事前のフルペーパーの提出から、プレゼン準備から、大変ワタワタしたのでした。

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記念品の数々

自分の発表は原稿も用意していたので、まあなんとかなったものの、

ディスカッションパートでは結局他の方の英語はほっとんど聞き取れず。

 

シチズンシップ教育という言葉の認知度

 私たちの発表タイトルは、

”Engineering education as citizenship education by P4C”

で、ようは、

高専では技術者倫理教育にも取り組んでるけれど、それは専門家としての責任とか倫理観に重きがあるよね。でも、技術者にだってこれからの時代、市民性=シチズンシップが必要だよね。私たちはそれを哲学対話(P4C)の授業でやってるよ、紹介するね。

という話でした。

 

そんなに複雑な話はなくて、P4Cという実践以外は、as you know...って感じだろうと思って発表に臨むわけですが、発表の感触を受けて思うのは、

あれ、シチズンシップ教育ってポピュラーな言葉だと思っていたけど、全然伝わってない?イメージ湧かない?みたいな戸惑いでした。

 

海外の人たちの発表やプレゼンには、今日本で話されるようなコンピテンシーとかソサエティー5.0とかインダストリー4.0とか、PBLとか、learning by doingとか そういう言葉は飛び出すわけで、シチズンシップ教育も同じようなもんだと思って、油断していました。。*1

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フィンランドの人たちのワークショップにて。ワークショップのふりかえりで、ピンときた写真を一枚とり、グループの人たちになぜその写真を選んだか説明する。

 

共同研究は大事

今回の発表は、私1人ではなくて、東京のむらせ氏と、オーストラリアのにしやま氏との共同発表でした。両氏には本当に大変助けていただき、むらせ氏にはお忙しいなか現地に同行いただいたし、にしやま氏にはなんといっても英語面でのサポートをめちゃくちゃしてもらいました。本当にありがとう。

 

定期的に彼らと連絡をとることで、〆切を守ろうというモチベーションも上がるし、今回の発表以外のものについてもお互いにコメントをしあう関係にもなるし、とてもよい。

 

教育の実践系だと一緒になにか研究する、論文書くってポピュラーなわけで、

もっと我々(哲学プラクティスな人たち)も一緒にやる、というのは大事だ、と思いました。だれか、やりましょう。

 

おもてなしがすごい

参加費がめちゃくちゃ高かったのですが、準備、当日のスタッフの方々、昼食の準備(昼食つきだった)、そして懇親会、会場までのシャトルバス、、、などなど考えると、そりゃあお金かかるわ、という感じもしました。

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異様に豪華な懇親会。地元の神楽の舞の披露やカラオケ大会が行われた。

懇親会は着席での大変立派なパーティーでございました。

 

 

 

 

*1:そういえば、学内でジェネリックスキルとかそういう方向の教養教育について研究なさっている先生もシチズンシップ教育という言葉についてはご存知ないようだった。

『こども哲学ハンドブック』はうなぎ屋の秘伝のタレみたいな本だよという話

理事を務めるNPO法人から本が出ました!

 

 

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こども哲学ハンドブック 自由に考え、自由に話す場のつくり方

 

 

私もここ2年くらい本格的にかかわってきたアーダコーダの主催講座のテキストをもとに編纂したもので、「こども哲学」という今注目されつつある実践について、はじめて触れていただく方には心からお勧めできる本です。

 

なんと、畏れ多いことに、本書の奥付では執筆者の末席に私の名前も記載いただいています。ありがとうございます、ありがとうございます。

 

ただ、実際に本になるまで1年以上、本当にがんばっていただいたのは、私よりも前に名前のあるお二人の執筆者の方々です。それぞれ、教育や哲学とは直結しないお仕事をフルタイムで日々なさっているなかでの執筆、大変だったことと思います。

 

私は本書の執筆過程でもいくつかの項目については協力をしましたが、どちらかといえば、私の本書への貢献は、本書のもとネタのほうにある、と思っています。

 

うなぎ屋のタレみたいな本

この本のもとネタは、アーダコーダが2014年から行っている主催講座のテキストです。これは当時講座発足時におおもとを作った先人たちがいて、それを少しずつ少しずつ毎回の講座のたびに議論を重ねながら修正、追加、更新して使ってきたものです*1

 

つまり、この本は、創業時から継ぎ足し継ぎ足し使っているうなぎ屋の秘伝のタレ、みたいなものだと言えるでしょう。

 

その意味では、この本には執筆者として名前があがっている面々だけでなく、たくさんの方の活動や知見が表に出ないかたちで積み重なってできたアーダコーダやそれに関わった人たちのこれまでの活動の集大成といってもよいと思うわけです。

 

創業時から継ぎ足し継ぎ足し使っているうなぎ屋の秘伝のタレみたいな本です

 

これが言いたいがために今日のブログを書きました。

たかだか4,5年でうなぎ屋かよ、という感じもするかもしれませんが、アーダコーダがスタートする前にも実践の歴史があったからこそ、アーダコーダがあり、講座があるわけで、特に関東圏でのここ10年のこども哲学の広がりと、そこへのアーダコーダ関係者の貢献をみるときには、あながち大げさでもないかな、とも思ったりもします。

 

 

マニュアルがないもののマニュアル本という微妙な位置づけ

しかし、本書はそのやわらかい概観のわりに、案外その位置づけをめぐっては悩ましい問題を含んでもいる、と著者の一人ながら思っています。

 

それは、はたして、本来マニュアルなんて重要じゃないものについて、マニュアル的なものを紹介した本を出すとはどういうことなんだろうか、という葛藤です。

 

たとえば、弊団体の初代代表、川辺さんはこんな風に著書で言っています。

 

結局のところ、子どもたちが安心して、言いたいことを言い、お互いの言い分を聞き合える関係ができているなら、「こども哲学」の方法論なんて、どうでもいいんじゃないかな、というふうに、今は思っています。

(川辺洋平著『自信をもてる子が育つ こども哲学 - “考える力"を自然に引き出す -』, 2018, p. 33.

 

基本的には、私も同じように考えています。

 

その意味で、こども哲学は、こどもたちに活発に考えさせたいから、こういう方法を採用しよう!とか、こういう風にすればきっとうまくいく!みたいな特効薬的なものではないだろう、むしろ、こどもとともに考える、哲学することについての心がまえを名指したものなんだ(その意味ではとてもシンプルでマニュアルなんていらないものなんだ)、そう思っています。

 

そんな風に考えるにもかかわらず、それでもなぜ今回の本は『ハンドブック』なんていかにもマニュアルっぽい本なのか。

 

もちろん、本の出版経緯やタイトルは私個人の一存とはまったく別のところにあるので、別の話です。それにそもそも本書はただのマニュアル本ではなくて、もっと柔軟な読まれ方にも対応できるようになっている、と思います。

 

その一方で、やっぱり、マニュアルっぽい部分をもつ本は、こども哲学の心がまえに共感してくれている方たちが、実際に自分でそれを始めていくときには、ゼロから一緒に寄り添うような本があったらきっと背中を押してくれるとも思うのです。

 

だから、この本は、実はマニュアルなんてないものについてのマニュアル本、という一見矛盾しているようで、でも、とても大切な本なんです。 

 

 

 

 

ーーー

同じように、アーダコーダがこれまで担ってきた活動や講座、今回の本も、そういったノウハウに特化した方法論や特効薬だ、に見えるかもしれないけれど、私たちとしては決してそんなつもりではなくて、一緒にこども哲学という心がまえを共有し、丁寧に場を作っていくお手伝いができる団体でありたい、と少なくとも私は思い続けています。

 

 

 

 
もう一人の著者の方のブログはこちら 

missasan.hatenablog.com

 

合わせて買ってね

 

僕らの世界を作りかえる哲学の授業 (青春新書インテリジェンス)
 

 

 

*1:私は、直近二年くらいの講座のテキストについて、みなさんの意見を集約し、具体的な更新や修正の作業を行っていました。

最近読んだ本とかこれから読む本とか雑記とか

雑記

お盆休みは東京に帰ったりもせず、妻と自宅でごろごろ、だらだらと過ごしました。

一日一本くらい映画を見たり、スーファミミニで妻に「マリオRPG」を勧めたり。

映画は、録画していた「風立ちぬ」はよかったし、「千と千尋」は妻がハマって二回連続で見た。

 

ちょっとしたお出かけとしては、柳井の金魚祭りに行ったこととか。

奥に見えるのがお祭りのちょうちん。

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ピカピカの大きい金魚を人々が取り囲んで、太鼓の音に合わせてぐるぐると高速で回す。爆走タイムがすごかった。

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ほかには、高校野球って様々に問題があるので楽しんで見れないような気もするのだけれど、それでも住んでいる地域の学校を応援したり。

 

 

 



 

最近読んだ本とか

 

学部の卒論でカント倫理学について書いて、ご指導いただいて以来、哲学対話のほうでもずっとお世話になっている先生の単著。上に書いているとおり、ただのカントの永遠平和論の解説ではなく、寺田さん(あえてさんづけをする)っぽい主張や議論が随所に見られて面白かった。

これもツイートしたことだけれど、哲学(対話)することは、カントのいう世界市民的な観点に立つこととつながっているというのは、本当だ、と思っていて、哲学対話の取り組みと合わせてもっと自分自身も論じてみたい。

すっごく久しぶりにカントを手に取りたくなった。(手に取ったとは言っていない。)

 

 

何のための「教養」か (ちくまプリマー新書)

何のための「教養」か (ちくまプリマー新書)

 

前期の授業の最後で、学生さんたちに、技術職になる(であろう)みなさんにも「哲学」や「倫理」を学ぶ意義がある、と言いたくて、この本で述べられている

教養は幸運なときには飾りであるが、不運のなかにあっては命綱となる。

 という言葉を拝借したりもした。

いつか、困ったとき、苦しいなと思ったとき、「当たり前に思っているものでも問うてよいのだ」という「倫理」の学びが助けになってくれるといいな。

 内容的には、教養を細かく論じるというよりも、著者の研究・実践遍歴を辿っていく感じだったが、それはそれで勉強になりました。

 

 

トランス・サイエンスの時代―科学技術と社会をつなぐ (NTT出版ライブラリーレゾナント)

トランス・サイエンスの時代―科学技術と社会をつなぐ (NTT出版ライブラリーレゾナント)

 

必要に応じて読んだのだけれど、思いのほか面白かった。原発事故前だけれど、それを予期させるような?記述もあり、示唆的だった。

科学技術政策という非常に高度で専門家集団によって決定されがちなものに対していかに市民社会の声を届けるのか。科学の側は、科学によって答えられること、言えることを真摯に情報として提供しつつ、これ以上は科学の領域を超えるという点(トランス・サイエンス)については市民の参加を促していく。大変素朴で当たり前のように聞こえる主張がいかに実践的には難しいことなのか、ということも「コンセンサス会議」(不勉強ながらはじめて聞いたワークショップの手法であった)の実践例からよくわかった。

 

 

 

 ジェンダーについては授業でも扱っているので手に取る。

全部は読めていないので、書かれている内容の良しあしは十分に判断できないのだけれど、大学のゼミ生の視点から素朴にジェンダー/フェミニズムについて向けられる問いに対して懸命に答える、という取り組みがそれとしてとてもよい。そしてすごい。

関心のある学生さんと読書会をしたいタイプの本。

 

 

体育・スポーツの哲学的見方

体育・スポーツの哲学的見方

 

スポーツ、武道あたりについて考えなくてはいけないので、必要に迫られて。

外国語のものもちゃんと調査していかないと、自分の知りたいことには出会えない感じもする。

 

 

これから読む本とか、宣伝とか

来週、第二弾の夏休みをとるので、そこで読みたい本とか。

 

資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐 (集英社新書)

資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐 (集英社新書)

 

 ガブリエルは主著のほうすらまだ読めていないのだけど、より公民科の教員っぽいほうの本から手に取ってみることにする。

 

  

日本人の知らない武士道 (文春新書 926)

日本人の知らない武士道 (文春新書 926)

 

武道とスポーツの違い、を知りたくて。

なにかいい文献はないですか? 

 

  

英語類義語活用辞典 (ちくま学芸文庫)

英語類義語活用辞典 (ちくま学芸文庫)

 

 

日英語表現辞典 (ちくま学芸文庫)

日英語表現辞典 (ちくま学芸文庫)

 

英語の勉強をする必要がある。来月には人と英語で話さなくてはいけないので、辞典を読んでいる場合ではないのだけれど。

 

 

夏物語

夏物語

 

大変話題の本。読むのを楽しみにしている。 

 

 

 

 

こども哲学ハンドブック 自由に考え、自由に話す場のつくり方

こども哲学ハンドブック 自由に考え、自由に話す場のつくり方

 

 これは宣伝。もうすぐ出ます。

こども哲学についての本はもう飽和しつつあるけれど、講座のテキストをもとに作ったやさしい本になっています。従来の本に新しいものを加える、というよりは、観点を変えて、これから始めてみたい方に読んでいただく最初の最初の本になればいいなという思い。

 
明日は

広島の小・中学校へ教員研修でお邪魔します。2年連続2回目。