今年度最初で最後の対面試験
今年度は前期のあいだはオンデマンド授業だったのでレポートやオンライン小テストで評価をしていた。それはそれで期末テスト一辺倒にならず評価が分散できたのでよかったなと思いつつ。2月に今年度最初で最後の対面試験があったのです。*1
書く課題
試験。毎回記述を入れてきていて、今までは「自分で問いを立てて考えを書く」のようなただのエッセイを書いてもらうこともあったのだけど、今期は平常時にすでにエッセイ的なものは提出してもらっていてそれはできない。なにか工夫をしたいなと思っていたところ、下のツイートのことを思い出す。
レポートを漫才の台本形式で書くように指定したら傑作が多く出てゲラゲラ笑いながら採点している
— ursus (@ursus21627082) 2021年2月1日
これはこの方も言及している通り、この本あたりを読んでいると、ふざけているようで良い課題であることが伝わると思う。
さて、自分は、ということで今回はこういう課題を出してみた。
問題を予告しておいて、当日までに準備してきてもらう形式。
かなり急な思い付きだったので採点基準のあたりはまだまだ推敲の余地があるのだけれど、実際ふたを開けてみると思いのほか力作ぞろいでよかったかなと思っているところ。
ユーモアに富んだものも結構あって、2人以上でよいところを4人くらい、ドラえもんのキャラクター風の性格をかき分けてみたり、生命倫理のテーマで対話の片方の人が実はデザイナーベイビーだったことが発覚したり、最後になにかしらオチやツッコミを入れてみたり。。直接採点には影響しなくても、課題の細部で遊んでくれるのはなんかうれしい。
手応え
もちろん、以前書いたような思考を止めてしまうようなNGワードっぽい言葉は出てくるには出てくるんだけれど、対話形式なのでもう一方がそれに突っ込みを入れたりできるので、淡々とエッセイを書くよりははるかにこちらとしても飽きずに読めるものに仕上がっている。
まさに、同じテーマでも、対話とかかけあい、という要素を入れることで、学生さんたちに悩んでもらうことができる。自分のなかにあるAという意見もBという意見も、ふつうのエッセイの文体ならどちらかに絞って書いたり、急ごしらえのCの解答を示したりしなくちゃいけないところ、対話文なら悩んだままどちらの立場も行き来しながら書くことができる。試験勉強する側からしたらめんどくさいと思うけれど、考えるための課題にするには、少々めんどくさいくらいがよいのだ、と今のところは考えておくことにする。
学生さんの感想は...
心の内では「試験期間中にこんなめんどくさいことやらせやがって」と思っている人もいるだろう。試験を終えての感想にはこんな感想があった。
- 最後の文章を書く問題は訂正がしやすいのでパソコンなどで作ってレポートで提出する方が作りやすいと思います。
- いつもは自分の考えをエッセイとして書く問題が最後にあったが、今回は対話文ということで二人のバランスをとるのがすごい難しかった。書き終えた今でもどっちかが論破していないかが不安だ。
- 予告問題があったのでその内容に関して詳しく知ることができていいテスト勉強になれた。
- 対話文、みんな好きじゃないかもですが、私は楽しかったです。笑
- 解答欄が思ったより大きくて会話をつづけるのが大変でした*2
- 対話文はただの作文より理解が深まった気がする。
- 自分に対話文をつくる才能はほぼなかったようです。
もちろん、こういう課題はレポートで出して、ちゃんと次以降の授業でよかったものを読み合わせて、哲学対話の素材にしてみる、くらいやりたいところ。グループで読み合わせて改良して、対話劇として発表するとかの授業もやってみたい。その意味だと試験でやるにはもったいないかなあ。ただ今回試験での実施としたのは、試験期間前の思い付きという事情以外にも、仮に最終成績への評価割合が一緒だったとしても、試験の緊張感のある場でアウトプットする、ということで思いがけない力が出たり、力作がそろう、ということもあるように感じている、という理由もある。それに、単なるレポートだと、コピペっぽい語りが横行したり、(無用なほど)時間をかけすぎる人が出てきてしまう、という面もありそう。
引き続き、書くことに悩む
授業の目標として哲学倫理学の知識を取得することだけでなく、「自分で問い、考えること」を据え、かつ対話そのものを評価しないという道を選んでいる以上、授業のどこかで複数回は成績評価に通じるものとして書いてもらう課題を入れざるをえない(よね?)。
今年度は、大福帳*3、哲学対話をしたあとのふりかえりレポート、サイレントダイアログ*4、それにこの試験問題とやってきたけれど、どの程度の量で、どの時期に、どういう課題を出して、どう評価するか、まだしっくり来ていないので引き続き悩みます。そもそも時間がないと言い訳をして、学生の書いたものへのフィードバックを怠っているなかで、書いてもらう量ばかり増やしていて、それもどうかと思うのです。
今日はここまで。